勉強ノート

地域保健対策に関する法律

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現任者講習会テキストP50に出てくる、地域保健対策に関する法律の用語解説です。それぞれの法律についての概略を知っていると、地域保健法の全体像が理解しやすくなるかと思い、まとめてみました。赤字で表示している法律は、現任者講習会において言及されたものです。

<対人保健>

健康増進法

国民の健康維持と現代病予防を目的として、国民が生涯にわたって自らの健康状態を自覚するとともに健康の増進に努めなければならないことを規定したもの。本法により、65歳以上を対象にした介護予防検診が開始。市町村の新しい義務として、特定高齢者把握事業と介護予防事業の実施が定められた。また、65歳未満の国民に対しては、特定検診事業が2008年度から開始され、メタボリックシンドローム該当者や予備軍をに対して特定保健指導を行うことを、健康保険者に義務づけている。また、第25条では、多数の者が利用する施設の管理者に対し、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう求めており、努力規定を制定しているが、この条文に違反しても罰則はない。

 

感染症法

伝染病予防法が前身。結核予防法と統合された、感染症予防のための処施策と感染症対策を定める法律。正式名称は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」。2002年の「SARS(重症急性呼吸器症候群)」や2007年の「新型インフルエンザ」の流行など、 保健医療を取り巻く環境の変化に対応するため、症状の重さや病原体の感染力などから、感染症を1類~5類の5種の感染症と指定感染症、新感染症の7種類に分類。それぞれの危険度に対応した対策を可能としている。

 

予防接種法

伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために、予防接種を行い、公衆衛生の向上及び増進をはかるとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された。予防接種法及び結核予防法による定期の予防接種は市町村長が行うこととされている。

 

母子保健法

乳幼児と母の健康保持・増進をはかるために制定。都道府県知事が母子保健のために実施すべき措置として母子健康手帳の交付 (16条) 、妊産婦および乳幼児の訪問指導 (11、17条) 、3歳児検診 (12条) 、養育医療の給付 (20条) などを規定する。 未熟児においては、公費により医療の給付を行うことが規定されている。

 

精神保健福祉法

精神障害者の医療および保護、自立・社会復帰の促進、精神障害の発生の予防を目的とした法律。(後の問題で詳説)

 

難病医療法

「難病の患者に対する医療等に関する法律」の略称。難病の患者に対する医療について、医療費助成の法定化や調査研究の推進等を定めた法律。助成は国と都道府県が半分ずつ負担し、患者の自己負担は所得や症状によって異なる。

 

がん対策基本法

2006年制定。医療の均てん化(全国どこでも同じレベルの医療が受けられる環境整備)、検診や研究の推進、がん対策推進協議会の設置、5年ごとのがん対策基本計画策定などが定められた。2017年の改正では、企業側の「事業主の責務」を設け、企業ががん患者の雇用継続への配慮に努めることや、「がんに関する教育の推進」として国や地方公共団体にがん教育を推進、民間団体が行うがん患者支援活動を支援し、がん患者への国民の理解が深まるようにすることを求めている。また、小児がん患者らの学業と治療の両立に必要な環境整備や、症例が少ない希少がんや難治性がんの研究促進、がん検診でがんまたはその疑いが判定された人が適切な治療が受けられるように、がん検診の実態把握など、必要な施策の実施を求めている。

 

肝炎対策基本法

肝炎研究の推進、医療の均てん化、肝炎患者等であることを理由に差別されないように配慮することを基本理念とし、国、地方公共団体、医療保険者、国民及び医師等の責務を規定した。

 

 

<対物保健>

食品衛生法

食品の安全性の確保、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、国民の健康の保護を図ることを目的としており、主な食品営業の他、食品、添加物、器具、容器包装等を対象に飲食に関する衛生について規定している。また飲食店等の食品を扱う営業の施設基準、都道府県知事が定める基準により「食品衛生責任者」の設置義務などを定めている。都道府県等の保健所には、食品衛生に関する専門知識を有する食品衛生監視員が配置されており、営業施設に対し監視、指導を行っている。

 

興行場法

映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設経営するものは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受けること、また、都道府県の条例で定める構造設備基準や、換気・照明・防湿・清潔等の衛生基準に従うことを定めている。

 

水道法

上水道の敷設と管理の適正合理化および水道事業の保護育成によって,清浄で豊富低廉な水の供給をはかり,公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的として制定された法律。上水道水源、水道施設の清潔保持、水質基準、施設基準を定めるほか、水道事業者の負うべき義務などについて定めている。

 

墓地埋葬法

「墓地、埋葬等に関する法律」の略称。墓地、納骨堂または火葬場の管理および埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的として制定。第3条の規定により、死体(もしくは妊娠7か月以上の胎児)は、原則として死後(死産後)24時間以内は、火葬(および土葬)してはならない。ただし、感染症法30条の規定により定められている1類から3類までの感染症や、新型インフルエンザ等の感染症による死亡の場合はこの限りではない。また、埋葬を行なう場合には、当該死体に係る死亡診断書と死亡届を提出し、受理した市町村長の許可証(火葬もしくは埋葬許可証)が必要であり(墓埋法第5条)、この許可を受けずに火葬・埋葬した場合には、墓埋法違反となるほか、刑法第190条「死体遺棄・死体損壊罪」の刑罰に問われる行為である。人間の死体の埋葬と墓地に関して規定するものであり、愛玩動物(ペット)等の焼却、埋却およびペット霊園に関する事項は含まれていない。

 

狂犬病予防法

狂犬病の発生予防,まん延防止,撲滅により公衆衛生の向上および公共の福祉の増進を図る法律。イヌの登録、鑑札の交付、予防注射、登録・鑑札のない、狂犬病予防員による捕獲・抑留、獣医師の狂犬病届出義務・隔離義務などを規定している。飼い主には飼い犬の登録や予防注射を義務づけており、登録しなかったり予防注射を受けなかったりすると、20万円以下の罰金が科される。

 

医薬品医療機器等法(旧薬事法)

薬事法改正により「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律」と名称変更された。医療機器等の製造から販売、市販後の安全対策まで一貫した規制を行い、献血に代表される血液事業、薬物乱用防止対策、化学物質の安全対策など国民の生命と健康に直結するさまざまな規定がある。

 

建築物衛生法(ビル管理法)

正式名称「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(東京都ではビル管理衛生法と略す)。不特定多数の人が出入りするビルを安全に衛生的に管理するための法律であり、空調管理や受水槽管理、衛生清掃が管理項目に定められている。百貨店や大型商業施設、映画館や劇場、ホテル、学校、オフィスビル等が対象となるが、病院や工場、大規模マンションは対象外となる。建築物環境衛生管理技術者、通称ビル管理技術者の選任義務等を定めている。

 

生衛法

「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」の略称。戦後の経済復興の中で生活衛生関係営業(理容・美容、クリーニング店、銭湯、食肉販売店、旅館業、飲食店など)は過当競争気味となり、正常な経営が著しく阻害されるとともに、特に「衛生水準の低下」が憂慮される状況となった。そこで全国の生衛業の組合員が一丸となり、衛生水準の向上、営業者の自主的活動及び経営の安定を図る措置等が規定された生衛法の必要性を国会等に強く訴えて成立。振興事業制度、標準営業約款制度、 環境衛生営業指導センター制度、生活衛生同業組合制度などを定め、生活衛生同業組合等の営業者の自主的活動を促進するとともに、料金等の規制、営業の振興の計画 的推進、経営の健全化の指導、苦情の処理体制整備、表示の適正化等により、施設の改善向上、経営の健全化、 振興等を通じた衛生水準の向上を図り、併せて消費者・利用者の利益を擁護することを目的としている。

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